仕事を終えて、上野駅で常磐線に乗り換える時、
始発電車にのんびり座っていく為、普段は一本見送るのだ。
今日は、何だか胸騒ぎして、何時もより約20分早い電車に乗る事にした。

マリーは一昨日前、食が思うようにならなくなり、昨日午後から夜にかけて
掛かりつけ獣医さんに預けて栄養注射・点滴など処置を受けたのだが、
一ヶ月ほど前に、同様の症状で日帰り入院処置を受けて帰宅するときほどは
体力が復活していなかった。
獣医さんからは、そろそろ厳しい状況に入っていると告げられていた・・・
殆ど食が無いのに、粘膜状の便がちょっと出るようになったとの事は、
体の内面(腸の内膜)が剥がれ落ちているとの事だそうで、
おそらく、自力で栄養をもはや吸収することは出来ず、
蓄えていた体内の脂肪・栄養を燃やすしかない状況である事。
若い時、ムチッと32kg位ピークだった体重が、今や半分以下の15kg・・・

いつもの様に、乗る電車を自宅にメール連絡・・・一本早いので帰る旨。
電車は上野駅を発車!!
暫くすると、バイブの携帯が音声着信。
無視していると、再び自宅からのコールがあり、
車内ではあるけれど応答する。小さな声で・・・

「マリーが息していない!! 心臓も動いていない!!!! 」と
詰まらせた涙声・・・

頭の中が一瞬真っ白になる・・・
「とにかく落ち着いて!!」と言ったものの、今の自分は何も出来ない。
そして、直ぐに、歯がゆい、情けない、無力感が押し寄せてきた。

昨日の今日でもあるので、「とにかく獣医さんに連絡してアドバイスもらって」
としか言えなかった。

帰宅途中の満員電車の中で、自分に今何ができるのか、何をしたら良いのか
頭の中が、色々駆け巡った・・・
冷静に、考えれば、もう息を引き取ってしまったようなので、今慌てても何も
変わらない事がはっきりしてくるので次のことをキチンと考えなければと
自分に言い聞かす!!

最寄駅に到着するまで後40分程の間、思いついたことを兎に角、
メールで送り続けた。

最寄り駅でバスに乗り換えるまでの僅かな時間に、掛かりつけ獣医さんに電話。
担当の先生は本日不在だったが、当番の先生には、今晩は閉院後も
連絡が着くようにお願いをする。

自宅に到着。
もう落ち着いた様子で、私に抱いてあげてと促された・・・
カバンをおいて、背広のまま、マリーを抱きかかえた。
何時もどおり、体も温もりを充分感じ、グッスリ寝ていて脱力しているようだ・・・
「ごめんね・・・その時に一緒にいてあげられなくて・・・」

私が帰るメールする直前まで普通に呼吸して熟睡していたそうで、
メールを受けて「もうじきパパ帰ってくるよ!」とマリーに告げ近づいた時に
呼吸をしていない事に気づいたそうだ・・・

考えられる、出来る蘇生処置をしたみたいだけれど・・・

「一本早い電車に乗ろう!! 」 と胸騒ぎした時、あの瞬間だったのかな ?!

担当の獣医さんから電話を貰った。
状況を詳しく話して、今後のアドバイスを貰う。
お腹の辺りに冷却剤をしておけば、大分気候が涼しくなったので
明日からの三連休中位は大丈夫だろうと・・・
体を綺麗に拭いてあげて・・・
三日ほど前に、一緒に風呂場でシャンプーしてあげたばかりなので、
体毛は、マリーの匂いと、シャンプーの香りが調度イイ感じ!!

体は毛布をかけてあげていれば、それほど温度は下がらず、
不思議な事に、手脚は全く時間経過しても硬直せず、
体液も全くと言っていいほど何も出てこず・・・
それほど、体の全てを燃焼し尽くしたようです。
唯一、苦労して直りかけていた、それでもグチュグチュ気味の床ズレ患部が
あっという間に、乾燥してカサカサ瘡蓋状態になってしまったのが皮肉です。

これほど、穏やかに、今でも目を覚ましそうな永眠顔は
これを「大往生」と言わずして何と呼べばよいのでしょう・・・
熱くこみあげる感じは押さえられず、目頭は熱くなり、鼻はつまり、
でも、心の中で拍手喝采していました。

今宵も、何時も通り添い寝しましたが、
起こされる事がある訳無いのに、
自然に午前2時と4時に目が覚めました。
寝たきりになってからは、二時間おきに寝返りさせてあげていたので、
体のリズムが習慣化してしまっているのです。

犬は脚の肉球は、良い匂いがして、個々違い個性があるのですが、
私は、マリーとノルテをはっきり嗅ぎ分けられる自信があります。

映像や音は記録に残す事が出来ます。
マリーの生きた約18年間の、技術進歩は可也ありました。
  例えば動画記録の進化は・・・
   VHSカムから最新Hi8ムービー(肩乗せタイプ)出た頃
   →DVテープのハンディーカム
   →ハイビジョン・ハンディーカム(メモリー記録)

でも技術が進歩しても、匂いは記録に留められない状況は変わっていません。
私の頭 ( 脳 ) に記録するしかないのです。
今も持続しているマリーの香ばしい匂いを
決して忘れたくない、絶対忘れないように、
自分の鼻先に、マリーの肉球を近づけて一晩過ごしました・・・